アスファルト防水とは
アスファルト防水は、従来から広く使われている防水工事の工法の1つで、石油由来の材料であり、耐久性や 防水性に優れています。
100年以上の歴史をもつアスファルト防水は高い信頼性があり耐用年数も他工法よりも⻑い傾向があることから、現在でも多くの工事現場で採用されています。
合成繊維不織布のシートに、液状に溶かしたアスファルトを染み込ませコーティングした、ルーフィングシート (建物内に水滴を入れないシート)を二層以上に仕上げることで、防水機能をより強固にする積層工法などがあります。
ルーフィングシートを積層することにより、水密性に優れた防水層が構成されるので、露出仕上げや押えコンクリートで仕上げたり屋上緑化を施したりと多彩な仕上げが可能です。
アスファルト防水は、広い場所への施工が適しているため、学校やマンション・公営住宅などの屋上や屋根で採 用されることが多いです。
各工法の特徴とメリット・デメリット
アスファルト防水は、主に次の3種類に分類されます。
①常温工法(冷工法)
ゴムアスファルト粘着層をコーティングした改質アスファルトシートを貼り重ねる防水工法で単層工法と複層工法がある。下地に対して軟接着の状態となるので下地⻲裂追従性に優れます。
また、この工法は勾配屋根の下葦材や地下外壁防水などでも広く使用されています。
【特徴】
多くの改修工事の現場で採用されているのが常温工法(冷工法)です。
常温工法はこの後に紹介する2つの工法と異なり、熱を使わずに防水層を作ることができるのが特徴です。
ルーフィングシートの裏面に、自着層と呼ばれるゴムアスファルトの粘着層をコーティングし、複数枚交互に貼り合わせていく工法です。
下地が軟粘着状態になるため、施工した下地にしっかりと付着します。
常温工法の利点は、施工が比較的簡単で迅速に行えることです。また、アスファルトは柔軟性があり、建物や構造物の動きに対応することができます。
さらに、アスファルトは耐久性が高く、⻑期間にわたって効果を発揮します。
既存のアスファルト防水露出仕様の改修で既存アスファルト防水の上にかぶせる「アスファルトonアスファルト」が、屋上防水の耐久性を向上します。
熱工法やトーチ工法に比べると接着性が低く、何枚ものシートを重ね合わせて施工する場合、重量が大きくな り、建物へ負荷をかけてしまうというデメリットもあります。
②トーチ工法
改質アスファルトルーフィングシートの裏面と下地を、トーチバーナーであぶり溶かしながら張り付け、あるいは張り重ねる工法。
【特徴】
トーチ工法は、熱工法の溶融釜のような大がかりな設備が不要で段取りが簡素であり、改質アスファルトルーフィングシートをあぶり融かして下地に張り付けるだけの 簡単な作業で容易に防水層をつくることができる。
しかし、この工法の問題点は、あぶり不足などの施工不良が原因による早期劣化や雨漏りなどの不具合が多く発生していることです。この原因はトーチバーナーの火炎が強いことや温度が1000°C以上にもなることから、改質アスファルトシートに火炎を当てればすぐに融ける錯覚が生じてしまうためです。
コストパフォーマンスに優れた工法だが、精度の高い丁寧な作業があってこそ、その防水性能が発揮されます。
丸められたシートを拡げながらあぶっていくために、狭小な場所においては施工性が 良くありません。
③熱工法
アスファルト防水はこの工法から始まったと言われる最も歴史のある工法です。
しかし、現場で溶融釜を焚く必要があり、アスファルト溶融釜で220°C〜270°Cに溶融した防水工事用アスファルトを使用し、ルーフィングシート複数枚を交互に積層して防 水層を作る工法。
【特徴】
主に新築工事で多く使用される工法。理由は熱工法の特徴にあります。
熱工法は溶融した防水工事用アスファルトを使用することにある。
常温時においては固形物である防水工事用アスファルトは、現場においてアスファルト溶融釜を灯油バーナーなどで熱して液状に溶融するが、溶融されたアスファルトは、ルーフィング類を張り付けた後、時間を経ず硬化し、防水層としての機能をすぐに発揮します。
つまり防水層を完成させるまでの作業時間の中に養生時間や養生期間がなく、防水層を容易に作ることができます。
アスファルトは熱すると液状になり、冷えると固体状 になるという性質をうまく防水工事に適用しているのです。
しかし、この工法の問題点は溶融したアスファルトの異臭や煙を放つこと、溶融温度が220°C〜270°Cと極めて高温であることから近隣の環境問題や、作業員の火傷などの危険性があります。
各施工方法の特徴をまとめると以下のようになります
1.常温工法
- 施工が比較的簡単でコストが少なく迅速に行える。
- アスファルトの柔軟性により、建物や構造物の動きに対応可能。
- 熱工法やトーチ工法に比べると接着性が低い
- 溶融釜やトーチなどの火気をほぼ使うことが無い、常温工法(冷工法)が現在では 主流になりつつあります。
2.トーチ工法
- アスファルトが基礎表面にしっかりと密着し、耐風性や耐震性が高い。
- 取り付け位置や張り具合を調整可能で、施工の精度が向上。
- 熱を使用するため、施工には高い技術と注意が必要。火災の可能性がある
3.熱工法
- アスファルトが基礎表面にしっかりと密着し、耐風性や耐震性が高い。
- 取り付け位置や厚さを調整可能で、施工の精度が向上。
- 熱を使用するため、施工には高い技術と注意が必要。火災の可能性がある
- 異臭や煙を放つため近隣への環境問題や作業員の火傷の危険
- 新築工事によく使われる
これらの施工方法は、建物や構造物の防水において効果的な選択肢です。
ただし、施 工方法の選択は、現場の条件や要件に応じて行う必要があります。
また、アスファル ト防水の耐久性を保つためには、定期的なメンテナンスが重要です。
アスファルト防水のおすすめポイントは?
アスファルト防水は、他の防水方法と比較してコストはやや高めですが、その分、⻑持ちし、重荷重にも耐えうる堅牢さを備えています。
これらの特性は、アスファルト 防水が高い価値を提供する要因となっています。
特に、熱工法によるアスファルト防水は⻑い歴史を誇り、多くの実績とデータが蓄積されています。
これにより、その防水効果と信頼性は非常に高く評価されています。
これらの豊富な実績と信頼性が、熱工法を選択する大きな魅力となっています。
一方で、トーチ工法や常温工法(冷工法)もアスファルトを使用しているため、基本的な信頼性は保持されています。
これらの工法は比較的新しいものですが、アスファルトの持つ堅牢さと防水性能を活かしています。
全体として、アスファルト防水はその耐久性と信頼性から、コストが高いというデメリットを補って余りある価値を提供する選択肢と言えます。
そして、各工法の特性を理解し、プロジェクトのニーズに最適なものを選択することで、より良い結果が期待 できます。